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絵本
『ちいさなふたりのしまぐらし』(2023年こどものとも年長版10月号)
たかおゆうこ (福音館書店)
「もし南の島まで飛ばされたら、どうする?」
私の母は小学五年生の修学旅行で、生まれて初めて海を見たそうです。「あまりにも広くて大きくて、恐ろしくて恐ろしくて目をあけていられなかったよ」と話してくれました。母は山育ちでテレビもない時代でしたから、その驚きはさぞかしだったでしょう。大人が実感をこめて語る話は、子ども心に残るものです。母のこの思い出話は何度聞いても心惹かれました。
前作『ちいさなふたりのいえさがし』を完成させた後に、ふと、母のこの話を思い出しました。山間の大きな胡桃の木の下で暮らすちいさなおじいさんとおばあさんが、海辺で暮らしたらどんなことになるのかな、どんな家に住むのかな、どんな暮らしをするのかな、と考え始めたら、あれよあれよと言う間にお話が立ち上がりはじめました。子ども頃『ロビンソンクルーソー』や『宝島』に憧れ、今も『ワンピース』や『パイレーツカリビアン』が大好きなことにも関係しているのかもしれません。
沖縄まで取材に行きました。朝日と夕日を追いかけて海辺ばかりを歩きました。でも、探しても探しても見つからないものがありました。このお話の要。諦めかけていた時に見つけました。人影のない古いホテルのプライベートビーチにポツンと一つ落ちていたココナッツの実!「ありがとう、これでやっと絵が描けます」とココナッツの実に手を合わせました。絵にたくさんのサイドストーリーを潜ませました。ふたりを南の島まで連れていく敷物は布団になったりカーテンになったり⋯最後はリュックになります。
今作で多くの多くの子どもたちが注目してくれた人気者、てんとう虫くんも再登場します。前作と合わせて楽しんで頂けたら幸いです。