YUKO TAKAO home website
books
『くるみのなかには』
たかおゆうこ(講談社)
「くるみのなかには なにがある?」幼い頃、冬になると長野に住む祖母がくるみを送ってくれました。母はそれを漬け物石の上に置いて慎重にカナヅチでトントンと叩きながら中身をとりだし、すり鉢で擦ってほうれん草のくるみ和えを作るのでした。堅いくるみの殻は囓っても握りしめても落としても割れることはありません。子ども心にくるみは何故そんなに堅いのだろうと思いました。くるみはふっくらと手をあわせた形にも似て、何か大切なものを守っているような気がしました。母がくるみを破る作業をはじめるとドキドキしました。もしかしたら、桃太郎のように、くるみからはくるみ太郎? キラキラ光る宝物が隠されている? 大人になっても くるみを目にするとそんな気持ちがむくむくとわいてくるのでした。そんなくるみへの思いを 絵本にしたいと思いました。まず、くるみの木を知ることからはじめました。長野での取材。大きなくるみの木の発見。そして、くるみ博士との出会い。頂いたくるみの実を実際に植えてみました。なかなか発芽しなくて諦めかけていた時に発見した紫色の小さな萌芽。胸が踊るような気持ちになりました。取材から得たこと、観察から感じた気持ち、絵本を作りながら考えたことをこの絵本にこめました。
この絵本は読んで「おしまい」ではなく、読んで「はじまり はじまり」の絵本です。くるみの中に何があるのかを想像してみてください。「くるみのなかには」というテーマは「くるみのそとには」というテーマも裏にかかえています。くるみの内側と外側に何を想像するか、何を創造していくかは私達次第です。まずはくるみの中を想像してみませんか。みなさんにこの絵本が届きますように!
編集者さんからの言葉
<想像力の贈り物を!『くるみのなかには』>
小さくてかたいくるみを手にしたとき、ひとは、どこまで想像力をはたらかせることができるでしょう?たかおゆうこさんは、これまで、目に見えないもの、目に見えない願いを、子どもたちにもわかるように、やさしく巧みに絵本で表現してきた絵本作家です。この作品では、「くるみの なかにはなにがある?」という小さな問いから、だんだんと木が育つように、想像が大きく広がっていきます。読み終えた後、手にしたくるみの感じ方が大きく変わります。想像力とはなにかを、体感できるはずです。描いた絵を切り抜き、コラージュとして一枚の絵にしあげた絵は美しく、ページをめくるごとに、ときめきを覚えます。