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翻訳

『おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし』

エイミー・デ・ラ・ヘイ 文 エミリー・サットン 絵 たかおゆうこ 訳

はじめて絵本の翻訳をさせて頂きました。「おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし」(徳間書店)芸術やデザインの分野で世界的に知られるロンドンのビクトリア&アルバート博物館の出版部門が博物館を舞台に作った絵本です。絵本の中には丸ごと実際のビクトリア&アルバート博物館がつまっています。文が博物館の学芸員でもあるエイミー・デ・ラ・ヘイ。彼女はシャネルの研究家でもあります。絵は今ロンドンで人気のイラストレーター、エミリー・サットン。主人公はクララ・ボタンという女の子。ボタンという名がユニークでしょう!よく見るとその子の着ているボタンがページをめくるごとに変身します。(トランスフォーマー!?)ぬいぐるみやお人形に帽子や洋服を作ってあげるのが大好きなクララ。作る時は帽子屋さんだったおばあちゃんの帽子をかぶります。おばあちゃんはずいぶん昔に亡くなったのでクララはおばあちゃんを写真でしか知りません。でも、もし生きていたらきっと仲良しになれたと思っています。(そんな風に未来の人達に思われたら素敵ですね)ところが、ある日、兄のオリバーがぼうしをこわしてしまいます。クララは悲しみます。おかあさんはクララを励まそうと博物館に行くことを提案します。(なんて素敵なおかあさん)そこでクララはこっそりこわれた帽子をリュックにつめます。博物館で展示を見ているうちにクララはおかあさんと離れて…。
クララは終始シャイな印象。なんだかいつも感情をおさえているような表情に私は共感してしまうのです。「ありがとう」という言葉さえおかあさんに促されて言います。でも心の中は「ありがとう」がこだましているのが解ります。そんな子だっているのです。心の中の豊かな思いや考えを言葉や表情で表現できないからクララはものを作るのでしょう。亡きおばあちゃんへの思いも静かに伝わってきます。
私はアメリカに3年ドイツに2年住みましたが、英文科卒ではありません。使っていたのは生活英語です。そんな私に何故翻訳?と編集者さんからその申し出を聞いた時はびっくり。でも、内容を読んでクララと自分の小さいころが重なりました。「もねちゃんのたからもの」ともどこか繋がっています。そして、幸せなことにエミリー・サットンさんの絵の文様的で細密で美しいこと!隅々までうっとりと絵に見とれました。美しいものに出会うと元気になります。
文字のレイアウトもなるべく原書に近づけて頂きました。流れるような文字の配列が画の美しさを引き立て、物語の時間の流れを助けていると思うのです。美しいと思う絵本の翻訳に関われて大変ではありましたが幸せでした(^・^)